利用用途

経済ニュースメディア「NewsPicks」サービス基盤のアーキテクチャーの刷新、Core Web Vitalsおよびサービスレベル目標(SLO)に基づく「ユーザー体験の作り込み」にNew Relicを活用

New Relicの選定理由と成果

  • オブザーバビリティの強化により、Webプロダクトの状態を可視化しトラブルシューティングを迅速化
  • SLI/SLOを制定し、Webプロダクトの高品質化を目指して ユーザー体験を観測・評価する習慣を定着化
  • 共通の指標を確立することで、開発チーム内の意思決定とアクションを迅速化

利用機能

  • New Relic APM
  • New Relic Browser
  • New Relic Service Levels
  • New Relic Distributed Tracing
  • New Relic Dashboards

 

 

経済を、もっとおもしろく。――およそ792万会員を擁する国内最大規模のソーシャル経済メディア「NewsPicks」(運営:株式会社ニューズピックス)が存在感を際立たせている。100以上のメディアから厳選された経済ニュース、オリジナルの記事や動画コンテンツに、有識者・専門家のコメント・解説を加えて提供するユニークなサービスが、ニュースの「なぜ」を知りたいビジネスパーソンを中心に支持を伸ばしている。株式会社アルファドライブ 執行役員CTOであり、株式会社ニューズピックス フェローを兼務する赤澤剛氏は次のように話す。

「NewsPicksはキュレーションメディアであると同時に、独自の編集体制を整えた自立した経済メディアです。NewsPicksさえ見てもらえれば、暮らしや仕事に役立つ重要な経済ニュースがいち早く手に入ります。ある事象に対して、その背景や将来への影響などを深掘りする記事を重視しており、各界のプロフェッショナルのコメントと合わせて多角的な視点からニュースへの理解を深めていただけます」

NewsPicks 赤澤様

株式会社アルファドライブ 執行役員CTO / 株式会社ニューズピックス フェロー 赤澤剛氏

2020年にニューズピックスに合流した赤澤氏は、NewsPicks Enterpriseなど法人向けプロダクトの開発をリードするとともに、同社のテックカンパニーとしての資質を強化するミッションを担ってきた。赤澤氏が重視しているのは、経営陣としての中長期的な視点で、エンジニアが多様なスキルセットを獲得できるよう、より多くの「打席に立てる機会」を提供することだ。

「私は2020年の5月にアルファドライブと同時にニューズピックスの開発チームにも参画したのですが、『ユーザー目線からプロダクトに向き合おう』『全員がプロダクト開発エンジニアになろう』という文化が完全に浸透している素晴らしい組織だと感じました。ユーザーの体験を意識しながらプロダクトとサービスを磨き上げていく姿勢と意識の高さは、プロダクトチームの大きな強みです。エンジニアひとり一人が、それぞれの得意分野を持ちながら貪欲に技術スタックを広げて、役割をオーバーラップさせながらチームの総合力を高めています」(赤澤氏)

プロフェッショナルとしてユーザーに価値を提供することに責任を持つ、そのために徹底的に技術を追求する、課題を発見して改善を繰り返す――ニューズピックスのプロダクト開発エンジニアには、こうした取り組みを支える環境が提供されている。そのひとつが、オブザーバビリティプラットフォームNew Relicである。

 

ユーザー体験の観測と改善にNew Relicを活用

New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にする。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する機能は業界随一との評価を得ている。

ニューズピックスがNew Relicを導入したのは2020年である。オブザーバビリティの活用を主導するSREチームリーダーの安藤裕紀氏は次のように話す。

「SREチームのミッションは、ユーザー体験を守ること、開発者体験の向上に寄与することです。New Relicを活用して、ユーザー視点・開発者視点でパフォーマンスを観測し改善をアドバイスするなど、14あるプロダクトチームを横断的にサポートしています。エンドユーザーの体験を可視化して定量的に評価できるNew Relicは、SREチームのミッションを支えるだけでなく、プロダクトチームの意識と行動も変えつつあります」

NewsPicks 安藤様

株式会社ニューズピックス  Product Division SRE Unit リーダー 安藤裕紀氏

プロダクトチームでは、新しい機能やページをリリースしたとき、パフォーマンス要求を満たしているか、より快適なユーザー体験に寄与しているかをNew Relicで観測しながら改善につなげる取り組みが始まっているという。

「具体的には、Webサイトの健全性を示す指標『Core Web Vitals』を利用してページやデバイスごとにユーザー体験を評価するとともに、『サービスレベル指標(SLI)/サービスレベル目標(SLO)』を独自に制定してAvailability、Latency、Qualityの数値目標の達成を目指しています」と話すのは、プロダクト開発エンジニアの飯田有佳子氏である。

 

「ユーザーに提供する価値とは何か」に向き合う

飯田氏が所属するProduct division Web Product Unitは、フロントエンド開発、GraphQL開発、API開発などを担う。飯田氏自身は、フロントエンドエンジニアとしてWebプロダクト開発に取り組むとともに、NewsPicksサービス基盤の「アーキテクチャー刷新プロジェクト」をリードしている。

「Next.jsとTypeScriptを用いてモダンなフロントエンドに刷新するプロジェクトを進めています。大きな狙いは、開発生産性の向上とメンテナンスの効率化、表現力の向上を通じたユーザー体験の改善です。本プロジェクトを通じて、すでにNewsPicks特集トップや番組トップなどを新環境へ移行しており、旧基盤と新基盤の開発工数見積もり比較を行ったところ、50%近くの向上を実現できました。New Relicで観測したデータを共有しながらプロダクトを改善する取り組みもこれに寄与しています。「サイトリニューアルと並行で基盤刷新を行っているのですが、現在のフロントエンドのトレンドを取り入れ、メンテナンス性の向上と生産性の向上どちらもを大幅に高められている状態です」と飯田氏は話す。

NewsPicks 飯田様

株式会社ニューズピックス  Product Division Web Product Unit プロダクト開発エンジニア 飯田有佳子氏

共通バックエンドおよびフロントエンドからなるNewsPicksのサービス基盤は、Amazon ECSを中心にAWS上に構築されている。New Relicは、共通バックエンドのアプリケーションサーバー、DBサーバーに加え、フロントエンドのWebサーバー、GraphQLサーバーにも導入された。New Relicは、「アーキテクチャー刷新プロジェクト」から成果を導くうえでも重要な役割を果たした。

「この新しいサービス基盤を使って、私たちがユーザーにどのような価値を提供するかを徹底的に議論しました。導き出した答えが、Availability(稼働率)、Latency(遅延時間)、Quality(品質)という指標です。これらに対してサービスレベル目標(SLO)を制定し、New RelicのService Level Management(SLM)で管理しながらチーム内で共有することで、チーム内の認識を合わせて改善への取り組みを具体化できるようになりました」(飯田氏)

「爆速にしたい」「使いやすくしたい」「より安定したシステムにしたい」といったエンジニア一人ひとりの漠然とした思いが、「95%のユーザーが1秒未満で画面を表示」「レスポンスのエラー率0.1%未満」といったチームの数値目標として明示され、議論はより建設的になり、意思決定とアクションは大幅に迅速化された。

「SLOをチーム共通の目標と捉えることで、本番リリース以前に特集トップ画面の表示速度を1秒以内に改善する成果をあげています。New Relicの『分散トレーシング』でAPIの処理が重くなっている原因を特定し、画面の描画スピードを改善させる修正を行うことができました。新機能をリリースすることがゴールではなく、『ユーザーにより良い体験を届ける』という意識を持ち、『改善のサイクルを回していく習慣』としてチーム内に定着した効果も大きいと思います」(飯田氏)

飯田氏は、SREチームの安藤氏らと協力して社内向けに「SLO知見共有会」を実施している。

「社内でエンジニアと名のつく人の半数以上が集まり、総勢50人以上が参加する盛況ぶりでした。エンジニア一人ひとりのSLOへの関心の高さを裏づけただけでなく、適切にアプリケーションをコントロールしてより良いユーザー体験を作り込むために、『エンジニア組織全体としてSLOを活用するタイミングが来ている』ことを強く印象づける機会となりました」(安藤氏)

「プロダクト開発エンジニア」に必須のスキル

ニューズピックスのプロダクトチームは、ユーザーに価値を届けることを第一に考える『全員プロダクト開発エンジニア』を行動指針としている。プロダクト開発エンジニアは、アプリケーションの開発だけでなく、リリース後のモニタリングやトラブルシューティングなど運用・保守まで責任を持っている。

「こうしたDevとOpsが一体化したプロダクトチームにおいて、プロダクト全体で起こっている事象や因果関係を可視化できるNew Relicは欠かせない存在です。プロダクト開発エンジニアには、サービスの信頼性を高めるための視点を持ち、価値が想定通りに届いているかを観測する『SREスキル』が求められていると言えるでしょう」と飯田氏は力を込める。

New Relicは、新しいサービス基盤上のプロダクトの状態を一目瞭然にし、ユーザー体験に影響する問題の検知、原因の特定、問題解決までを迅速化する。New Relicを活用するだけで、「SREスキル」のスタートラインを大きく前進させることができるのだ。

「ニューズピックスのエンジニア全員が、自身の担当するプロダクトでオブザーバビリティのメリットを即座に享受できるよう、New Relicの導入からパラメーター設定、ダッシュボード作成までを自動化するようなパッケージ開発を進めていきたいと考えています。新しい合言葉は、『全員SREスキルを備えたプロダクト開発エンジニア』です」と安藤氏は話す。

ニューズピックスは、テックカンパニーとしてどのような進化を指向しているのか。赤澤氏は次のように結んだ。

「ニューズピックスのエンジニアチームは『Server-Side Kotlin』や『開発者体験』への先進的な取り組みで知られてきましたが、『New Relicとオブザーバビリティの活用でもすごい』というのは、ぜひ知っていただきたい事実です。SLOは経営視点でも非常に重要度の高いテーマであり、私たちがSLOに対峙するきっかけを作ってくれたNew Relicに感謝しています。私たちが価値の高いユーザー体験をさらに磨き上げていくために、これからも適切なアドバイスとサポートを期待しています」

 

NewsPicks様_集合写真2