デジタルコンテンツ流通を進化させる柔軟性・俊敏性に優れたサービス基盤の実現へ
- Year joined New Relic
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2022
利用用途
デジタルコンテンツ流通を支えるサービス基盤の安定稼働、トラブルシューティングの迅速化、ユーザー体験の可視化を通じたシステム改善にNew Relicを活用
New Relicの選定理由と成果
- 電子書籍取次システム「eBook」の安定稼働にアプリケーションパフォーマンス監視を活用
- 監視・保守の属人化を解消し、チーム全体でモニタリングとトラブルシューティングのスキルを向上
- 次世代サービス基盤として開発中の電子書籍流通システム「DB4」におけるNew Relicの活用に期待
メディアドゥが、デジタルコンテンツ流通における「変革者」としての存在感を高めている。国内電子書籍流通No.1のポジションに甘んじることなく、出版業界から裾野を広げて「コンテンツ業界への貢献」を掲げてビジネスモデルを進化させるチャレンジは、メディアドゥ自身がコンテンツ業界のDXを支える「Publishing Platformer」への変革に挑む強い意思の表れだ。同社 技術本部長の中野要氏は次のように話す。
「メディアドゥは、『著作物の健全なる創造サイクルの実現』というミッションを掲げ、『ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ』というビジョンのもと様々な取り組みを進めてきました。電子書籍取次を中心にビジネスを成長させ、グループ総売上1,000億円を達成した現在もコンテンツが持つ本来の価値を守りながら、デジタルの時代ならではの新しい価値創造に挑む姿勢は変わりません」
メディアドゥは、デジタルコンテンツの資産価値を守りながら安全に流通させるために、新たなビジネスモデルの選択肢として、ブロックチェーン技術を活用した「DCA®(デジタルコンテンツアセット)」を提唱。その実現に向けて、2021年10月にNFTマーケットプレイスをローンチしたことでも注目された。
「私たちが出版社と電子書店を結ぶ『電子書籍取次ビジネス』を本格化させてから16年――流通総額は2,000億円に達し、国内流通シェアは38%*を超えるまでに成長しています。これを支える電子書籍取次システム『eBook』は、2,200以上の出版社と150以上の電子書店を結び、9億ファイル/月以上のコンテンツ配信を担っています」(中野氏)
*出所:インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2022」より 2021年度の実績値を記載
「eBook」は、様々なビジネス要求に応えるために機能を拡充させ、処理能力を強化しながらメディアドゥの中核ビジネスを支え続けている。2021年にはオンプレミスからAWSへの移行・リホストを完了させた。
「電子書籍の配信数は年々増え続けており、eBookの環境をより安定的に運用し、サービス品質を維持・向上させる目的でオブザーバビリティツールの検討を開始したのは2022年初頭です。その後、数カ月の検証期間を経て2022年7月にNew Relicを正式導入しました」(中野氏)
電子書籍取次システムのサービス高品質化
New Relicは業界を代表するオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであり、デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にする。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する機能は、業界随一との評価を得ている。
「New Relicを導入した狙いは大きく2つあります。①長年にわたる機能拡張で複雑化が進んだ『eBook』を可視化してシステムの安定稼働に寄与すること。②SRE部の標準オブザーバビリティツールとして活用を進め、チーム全体のモニタリング/トラブルシューティングのスキル向上を図ることです」と話すのは、技術本部 SRE部に所属しNew Relicの活用をリードする鈴木彩人氏である。
鈴木氏らが最初に注目したのは、New Relic APMによるアプリケーションパフォーマンス監視だった。
「サービス単位、SQL単位で処理時間を把握できることに、New Relic APMの大きなポテンシャルを感じました。何らかの遅延が発生したとき、ボトルネックがどこにあるのか、原因がアプリケーションコードなのか、データベースの過負荷なのかも短時間で特定できます」(鈴木氏)
New Relic APMは、Webアプリケーションのレスポンスタイム、スループット、エラー率、トランザクションなどを可視化するとともに、ユーザー体験に影響するコードやコード間の依存関係をリアルタイムで特定できる。
「従来は、Amazon CloudWatchやMackerelによるインフラリソースとログの監視が中心だったため、ユーザーが遅延なくサービスを利用できているか、ユーザーのどのような挙動がレスポンスに影響したのかを把握することは困難でした。New Relic APMとBrowserを組み合わせることで、様々なシーンのユーザー体験を可視化しながら、ユーザー視点でサービス品質の向上に取り組むことができると期待しています」(鈴木氏)
New Relicが採用された決め手は、こうした優れた機能性とライセンス体系だった。監視対象が増えてもコストが変わりにくいので、安心して使い続けられることもNew Relicの特長だ。「ユーザーライセンスを基本とするシンプルなライセンス体系で、私たちが使いたいNew Relicのすべての機能を利用できるメリットは大きい」と鈴木氏は話す。
SRE部全体のスキル向上にNew Relicを活用
2020年に編成されたメディアドゥのSRE部は、2年を経て10名体制にまで拡充されている。eBookをAWSへ移行したことが、SRE部の役割と期待を高める大きな要因となった。鈴木氏は、自身でNew Relicの活用を進め、NRQL(New Relic Query Language)を駆使してダッシュボードを開発し、エバンジェリストとしてNew Relicの有効性を社内に啓蒙している。
「SRE部は、技術本部で運用する全システムを横断的に監視し、迅速な問題解決を通じて高品質なサービスを安定的に提供するミッションを担っています。New Relicは、メディアドゥの中核システムであるeBookから導入し、インフラとアプリケーションの統合的なモニタリングを開始しました。ダッシュボードでメトリクスを共有しながらチーム内でノウハウを蓄積しています」鈴木氏は話す。
メディアドゥでは、ビジネス成長とともにエンジニア組織も体制強化を図っているという。eBookの開発・保守を担うシニアエンジニアの天野庄平氏は、「New Relicには属人化問題の解決にも期待している」と話しつつ次のように続ける。
「これまでは、eBookの監視や問題発生時の原因調査・復旧に対応できるのは、熟練エンジニアに限られていました。New Relicによって平常時と異常時の違いが可視化され、一部の経験者しかわからなかった問題点をチームで共有できるようになったことは大きな変化です。現在は、SRE部が問題の検知と一次対応を行い、必要に応じて開発チームへエスカレーションする体制が固まりつつあります。New Relicによって、SRE部の問題解決力が大きく底上げされ、誰もが標準化された手順で、かつ同じ水準で対応できるようになるものと期待しています」
開発が進む次世代サービス基盤「DB4」
メディアドゥでは、eBookに代わる新しい電子書籍流通システム「DB4」の開発が急ピッチで進められている。 さらなる市場成長を支える次世代サービス基盤として位置づけられるものだ。DB4というネーミングには、Author、Publisher、Store、Userという「4つのステークホルダーのためのDatabase」という意味が込められている。
「DB4では、開発生産性と拡張性を大幅に強化し、次々と顕在化するビジネス要求に柔軟かつ俊敏に適応できるシステムを実現します。また、国内最大級の電子書籍販売データの分析機能を提供し、キャンペーンの運用をサポートする機能もさらに拡充する計画です。著作者、出版社、電子書店、読者すべてに価値の高いサービスを提供し、デジタルコンテンツ市場の成長に貢献します」と中野氏は力を込める。
DB4は、GO+Reactベースのモダンなコンテナアプリケーション群として開発が進む。機能モジュール単位でのリリースが順次行われており、すでにNew Relicの導入にも着手しているという。
コンテンツが持つ本来の価値を守りながら、デジタルの時代ならではの新しい価値創造に挑戦するメディアドゥ――New Relicのオブザーバビリティ(可観測性)に対して、中野氏は「ユーザーの行動分析やセキュリティ監査への応用」にも期待を示しつつ次のように結んだ。
「New Relicの導入により、インフラ視点でなくユーザー視点でサービス品質を把握できるようになったことは、SRE部だけでなくビジネス部門にとっても大きな変化です。今後は、SLI/SLOを制定してサービス品質のいっそうの向上に役立てていく考えです。New Relicを活用した取り組みを通じて、メディアドゥのエンジニア組織は新しいステージに駆け上がることができると確信しています。New Relicには、私たちのビジョン『ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ』の実現に向けて、コンテンツ業界のDXに貢献してもらえることを期待します」