株式会社 三越伊勢丹システム・ソリューションズ|三越伊勢丹グループのオンラインビジネスを支える「DevOpsが根づいた組織」への変革
利用用途
ECサイト「三越伊勢丹オンラインストア」、API基盤「ビジネス・プラットフォーム」、各種スマートフォンアプリなどのプロアクティブ監視にNew Relic Oneのフルスタックオブザーバビリティを活用
New Relicの選定理由と成果
- SalesforceやAWSなどのマルチクラウドに適用できる網羅性
- 複雑なハイブリッド環境での問題解決を容易にするオブザーバビリティ
- 豊富な機能セットを全て活用できるシンプルなライセンス体系
- 開発と運用の垣根を取り払ったDevOpsが根づいた組織への変革
三越伊勢丹グループのオンラインビジネスが急成長を続けている。2020年5月にリニューアルした「三越伊勢丹オンラインストア」をはじめとする2021年3月期のEC関連の売上は、前期比57.5%増となる315億円を達成した。三越伊勢丹グループならではの強みを活かして、良質なオンラインでの顧客体験を追求してきた成果である。三越伊勢丹システム・ソリューションズ ICTプラットフォーム部長として、グループのDX推進の一翼を担う唐沢猛氏は次のように話す。
「三越伊勢丹グループのオンラインビジネスは、実店舗へお客様を誘導するための施策から、実店舗でのビジネスと融合し相互で補完する役割に大きく変わりました。コロナ禍という困難を全社一丸となって乗り越えていくために、オンラインとオフラインが連携してお客様価値を高めていくことを目指して、サービス開発とシステム開発が一体となって様々なチャレンジを進めています」
顧客満足度の高い実店舗での体験価値をオンラインでも提供する、オンラインと実店舗がシームレスにつながる新しい顧客体験を創造する――三越伊勢丹グループでは、こうした目標の達成に向けて様々な取り組みを始めている。ECサービスを提供するクラウド上のシステムと、商品・在庫を管理するオンプレミスの業務系システムが連携する仕組みの整備は、取り組み全体を支える基盤となるものだ。
「実店舗と共通の在庫データを参照して、三越伊勢丹オンラインからリアルタイムで在庫を引き当てるためのAPIを新たに開発しました。これを含めフロントエンドとバックエンドを結ぶAPI群を『ビジネス・プラットフォーム』と呼んでおり、お客様向けアプリや店頭の従業員が使うアプリもこの仕組みを利用して業務系システムと連携させています」(唐沢氏)
三越伊勢丹グループでは、オンプレミスからクラウドへの移行を戦略的に進めており、マイクロサービスアーキテクチャーを採り入れたモダンなアプリケーションの開発にも積極的だ。
「新規サービスの開発はクラウドネイティブを基本としていますが、オンプレミスの業務系システムにはレガシーなテクノロジーも多く残っています。複雑なハイブリッド環境のモニタリングをシンプルにして、サービス基盤やアプリケーションの不具合をいち早く検知可能にし、お客様のサービス品質を継続的に向上させていくためにNew Relic Oneを採用しました」(唐沢氏)
三越伊勢丹グループのDXを支えるIMS
三越伊勢丹システム・ソリューションズ(以下、IMS)は、三越伊勢丹グループのIT/デジタル領域における戦略的なミッションを長年にわたり担っている。ビジネスの中核を支えるバックエンドシステムの開発・運用をはじめ、DXの一環としての「三越伊勢丹オンラインストア」のリニューアルやユニークなアプリ開発でも多くの成果をあげてきた。
「店頭の従業員がオンラインで接客するための『三越伊勢丹リモートショッピングアプリ』や、お客様の足型に合った商品提案を行うために3D計測データを活用する『YourFIT 365アプリ』を、グループ企業と協力しながら開発しています。オンラインでの注文に対し、スマートフォンから店頭在庫を引き当てるための従業員向けアプリの提供も開始しました」と唐沢氏は話す。
2021年初頭に導入されたNew Relic Oneは、ECサイトの「三越伊勢丹オンラインストア」、AWS上に構築された「ビジネス・プラットフォーム(API基盤)」「各種スマートフォンアプリ」のモニタリングから活用が始まった。
「New Relic Oneによるアプリケーションパフォーマンス管理、ログ監視、インフラ監視をまずクラウドネイティブの環境から適用しました。APIを介してマイクロサービスが連携するサービス基盤では、障害やパフォーマンスボトルネックといった問題の解決には高度なスキルが必要です。New Relic Oneによる可視化は、若いエンジニアチームにとって強力な武器になると考えました」(唐沢氏)
New Relic Oneは業界を代表するオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであり、デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にする。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する機能は業界随一との評価を得ている。
「New Relic Oneを採用する決め手となったのは、アプリケーションパフォーマンス管理の有効性とモニタリング対象の網羅性です。何らかの不具合が発生したときに、アプリケーションのプロセスで何が起こっているのかを一目瞭然にし、原因がどこにあるのかを即座に特定できます。将来的には、既存のシステム監視ツールがサイロ化している問題を一掃し、統合的なモニタリング環境を実現したいと考えています」と唐沢氏は期待を示す。
アプリケーション開発チームの意識を変える
IMSのDX系のアプリケーション開発チームは若手エンジニアを中心に構成されている。クラウドネイティブならではのスピード感で次々とアプリ開発を手掛けながら、New Relic Oneも使いこなす井上諒氏は次のように話す。
「システムで何らかの不具合が発生したとき、従来の環境ではログを追跡して原因を特定するまでにかなりの手間と時間を要していました。問題解決に苦労させられた経験も少なからずあります。New Relic Oneを利用するようになってからは、フロントからAPIへのアクセスとデータベースクエリまでが横断的に見えるようになり、アプリケーションプロセス上のボトルネックやコードの不具合も即座に特定できるようになりました。解決まで数時間を要していたような問題を数分レベルまで短縮できています」
井上氏が高く評価するのは、NRQL(New Relic Query Language)を使ったトラブルシューティングの効率化とエビデンスの取得だ。
「NRQLを使えば、New Relic Oneが収集するメトリクス、イベント、ログに対し、私たちが欲しいデータを見たい形式や切り口で可視化できます。パフォーマンスの計測や障害対応時に利用できるだけでなく、不具合の根本的な原因を特定してチーム内での報告や情報共有にも使えます。これまで見えなかったものが見えるようになって、開発チームの意識も少しずつ変わってきました」(井上氏)
IMSの開発チームに変化をもたらしたのは、New Relic Oneのオブザーバビリティ(可観測性)である。井上氏は、定期的な社内勉強会やハンズオンを実施して、New Relic Oneの操作方法や利用するメリットを積極的に発信してきた。
「New Relic Oneを通じて『オブザーバビリティ(可観測性)』の威力を初めて体感したメンバーが大半でした。問題の特定と共有が迅速に行われ、メンバーそれぞれの責任が明確化されたことが、チーム全体に『良いプロダクトを作ろう』という意識をもたらしたのだと思います。開発チームにとって、New Relic Oneは自分たちの行動を変えるDXのツールになっていると感じます」(井上氏)
「開発と運用で大きくチームが分かれていた時代が長かったため、IMS全体で見れば『モニタリングは運用チームの仕事』という意識があったと思います。全社がクラウドファーストに大きく舵を切ったタイミングで、社内体制もDevOpsを前提とした形に変え、アプリケーション/ミドルウェアのモニタリングも開発チームの責任範囲となりました。DevOps体制をしっかりと根づかせるためにも、開発チームが能動的にNew Relic Oneを使いこなすことは必須であり必然でした」と唐沢氏は話す。
New Relicの「オブザーバビリティ成熟モデル」を活用
IMSでは2021年初頭からNew Relic Oneの本格的な活用を開始し、New Relicのエキスパートから技術支援を受けながら「オブザーバビリティ成熟モデル」に沿って着実にステージを上がっている。New Relic Oneの活用方法に関する開発チーム内での情報交換も、頻繁に行われるようになっているという。
「受動的なシステム監視から積極的なモニタリングへ、守りから攻めに行動を変えることで、結果としてアプリケーション開発に充てられる時間が増え、開発スピードを上げながら品質を高められることを実感しています。今後はさらにNew Relic Oneを使いこなして、予測的な対応、データドリブンによるビジネス貢献へとステージを高めていきたいと考えています」(井上氏)
New Relicが提唱するオブザーバビリティ成熟モデル
New Relic社による技術支援は製品選定時も期待が大きかった。New Relicのエキスパートが、導入時だけでなく、活用を進めていく過程でもしっかりとサポートすることが他との大きな違いだ。
「New Relic Oneは、ユーザー数と取り込んだデータ量でコストが決まるシンプルなライセンス体系ですべての機能セットを利用できることも、私たちにとってはメリットが大きいと言えます。今後、オブザーバビリティを適用する対象が広がっていく中で、サーバーライセンスを採用する製品と比べるとかなりコストを抑えることができるはずです」と唐沢氏は話す。
三越伊勢丹グループが利用するシステムのクラウドへのリフト&シフトは着実に進んでおり、基幹業務システムのクラウド移行もいよいよ視野に入ってきた。唐沢氏は次のように話した。
「オンプレミスからクラウドへのシフトは、エンジニアのスキルセットだけでなく、私たちIMSという企業の価値創造モデルにも変革を迫るものです。三越伊勢丹グループのビジネスに貢献するIT/デジタルサービスを提供していくために、DevOpsが根づいた組織に生まれ変わることが求められています。私たちはNew Relic Oneの活用を進めながら、全社を挙げてDevOpsへの取り組みを加速させていきます」