従業員2,200名の“ベンチャー”が挑む、エンジニア組織の変革とテックカンパニーへの進化
- Year joined New Relic
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2022
- Featured Use Cases
利用用途
「中期経営計画dip2025」で掲げた重点テーマのひとつ「ガンガン作れる200人体制」の実現に向け、エンジニア全員がNew Relicの全機能を利用可能な環境を整備し、組織の変革を推進
New Relicの選定理由と成果
New Relicのオブザーバビリティ(可観測性)を、中期経営計画で掲げた「エンジニア組織の内製化」と「真のテックカンパニーへの進化」に活用
- プロダクト目線を持ったエンジニアの育成
- テクノロジーに強いエンジニア組織への進化
- エンジニア組織の取り組みの成果や実績の可視化
利用機能
- New Relic APM
- New Relic Browser
- New Relic Infrastructure
- New Relic Logs
- New Relic Synthetics
「バイトル」「はたらこねっと」などの人材サービス、「コボットシリーズ」で知られるDXサービスを展開するディップ株式会社が、成長戦略を加速させている。2022年2月期の売上は400億円に迫る勢いを見せたが、2023年2月期はそれを35%上回るペースで推移している。同社が「中期経営計画dip2025」で掲げたアスピレーションは、「2025年2月期に売上高1,000億円、営業利益300億円を達成する」という挑戦的なものだ。執行役員 CTOの豊濱吉庸氏は次のように話す。
「ディップは、『Labor force solution company』というビジョンのもと、労働市場における諸課題を解決し、誰もが働く喜びと幸せを感じられる社会の実現を目指しています。私が管轄するシステム統括部は、求人メディアをはじめとする様々なサービスを支えるエンジニア組織です。ディップは2,200名以上の従業員規模に成長しましたが、私たちは今、ベンチャーのようなチャレンジ精神で自身の変革に取り組んでいます」
ディップが2021年に策定した『中期経営計画dip2025』では、エンジニア組織のあるべき姿として「ガンガン作れる200人体制」の実現が掲げられている。外部パートナーに依存してきたプロダクト開発フローを見直し、増大するビジネス要求に応えながら開発をスピード化するためには、エンジニアリングの内製化が欠かせないからだ。以来ディップでは、自社のエンジニアが、アーキテクチャー設計や開発そのものをリードできる組織・体制作りを着実に進めている。
プロダクト目線を持ったエンジニアを育成
自社のエンジニアが開発のイニシアチブをとること、プロダクト目線を持ったエンジニアを増やすことが、内製化の大きな狙いだ。システム統括部 バイトルエンジニアリング部 部長であり、変革のリード役を務める五月女直樹氏は次のように話す。
「サービスの企画から、プロダクトの設計・開発までを社内で主導的に行うことで、より多くのアイデアを短期間で具現化できるようにします。エンジニアにとって重要なのは、『プロダクトの目的は何か』『ユーザーは何を求めているのか』を深く考えながら開発に携わることです。内製だからこそ、企画チームとエンジニア組織がより良いサービス/プロダクトを目指して協力し、お互いを高め合うことができると考えています」
ディップのエンジニア組織は、2020年からの2年間でおよそ2倍の規模に拡大した。
「システム統括部では、『働く人々の本質的な課題をエンジニアリングで解決する』というミッションを掲げました。プロダクト目線、そのプロダクトを実際に使うユーザー目線を持ったエンジニアをさらに育成し、私たち自身がテクノロジーに強いエンジニア組織に進化することで、この目標に取り組んでいく考えです。また、これを進めていく上でエンジニア組織の『成果が見える仕組み』が必要になると感じていました」(五月女氏)
エンジニアの意識と行動を変え、テクノロジースキルを高め、開発手法を見直し、成果の計測・評価の仕組みを確立する――システム統括部の取り組みは、まさに「エンジニア組織の変革」へのチャレンジである。2022年9月、ディップはオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームNew Relicの本格的な活用を開始した。New Relicの豊富な機能をフルに使えるライセンスを、100名を大きく超えるエンジニア全員に提供していることに注目したい。
エンジニア組織の変革にNew Relicを活用
New Relicは、デジタルサービスにおける重要指標をエンドツーエンドで観測・可視化するオブザーバビリティ(可観測性)ツールである。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する豊富な機能を備えている。ディップが着目したのは「エンジニア組織を変革するためのツール」としてのNew Relicの有用性である。
「New Relicは、アプリケーションに遅延などが発生したとき、問題の検知、原因の特定、解決の迅速化に即座に威力を発揮しました。重要なのは、レスポンスの悪化や操作上の不具合といった『ユーザーの体験』を可視化できることです。New Relicなら、ユーザー目線でサービスやプロダクトの品質を向上させるための取り組みに欠かせない情報が手に入ります」とシステム統括部の増井和治氏は話す。
100名を超えるエンジニア全員がNew Relicを利用できる環境は、「プロダクト目線のエンジニアを育成する」ための基盤となるものだ。システム統括部の大塚裕紀氏は、開発の最前線でまさにそれを体感しているという。
「New Relicの活用を通じて、データ指向でプロダクトの改善に取り組むことができるようになりました。生のユーザーの行動が可視化された情報の意味を紐解いていく作業は、ユーザーを近くに感じることができてサービス品質を向上させる本質に近づく実感があります。また、そういったプロダクトへの思い入れは、エンジニアとしてのスキル向上への意欲という面でも大きな意義があると考えています」(大塚氏)
「New Relicを全員が使えるようにすることで、誰もが『システムやアプリケーションの可視化』のメリットを享受できるようになりました。これが、インフラエンジニアとアプリケーションエンジニアの垣根を取り払う効果ももたらしています」と増井氏は続ける。
従来のインフラ視点での監視ツールでは、膨大なログを収集・分析してアプリケーションコード上の問題を特定するまでに数日を要することもあったという。New Relic正式導入前の評価では、新リリースの際の様々な負荷テストの結果をレポートにとりまとめる作業が効率化され、総テスト工数を半減できることが確認された。New Relic導入により状況は大きく変わりつつある。
「New Relicのオブザーバビリティ(可観測性)は、非効率な業務からエンジニアを解放し生産性の向上に寄与しています。これが、企画チームとの共同作業や新しいテクノロジーにチャレンジするための時間を生み出すことにつながっています」(五月女氏)
開発の成果を可視化しチームで共有
New Relicのオブザーバビリティ(可観測性)は、エンジニア一人ひとりの意識と行動をプロダクト目線に変え、チームの生産性と技術力の向上に寄与している。さらに、チームの取り組みの成果を客観的に可視化することで、「エンジニア組織を変革するためのツール」としての真価を発揮しようとしている。五月女氏が次のように話す。
「Webサイトの健全性を示す指標『Core Web Vitals』を利用して、コンテンツの表示時間(LCP)、ページ操作の応答性(FID)、ページ表示の安定性(CLS)を評価する環境を整えました。たとえば、新機能をリリースしたときにCore Web Vitalsスコアを見ることで、ユーザー体験がどう変わったかが一目でわかります。New Relicで収集したこの情報をチームで共有し、共通の指標を用いてエンドユーザーの体験を評価しながら、プロダクト目線・ユーザー目線でサービス改善に取り組むことが可能になりました」
新しいチャレンジも始まっている。デプロイの頻度、変更リードタイム、変更失敗率、サービス復元時間の4つを指標とする、「Four Keys」によるエンジニア組織のパフォーマンス評価である。
「たとえば、お客様へ新しい機能をどれだけ届けられているか、不具合があったときに迅速に復旧できたかを、スコアとしてNew Relicのダッシュボードで参照することができます。チームとして取り組んだ開発の成果が数値化されることで、もっとスコアを上げていこう、より良いサービスを提供していこう、というプロダクトに対する思いがいっそう強まりました」と大塚氏は話す。
Four Keysの導入は、大塚氏が所属する「はたらこねっと」の開発チームの自主的な取り組みから始まった。五月女氏は次のように評価する。
「New Relicで、新しいアイデアをすぐ試してみる、実践しながら工夫してみる、といったボトムアップ型の取り組みが生まれてきたことは期待以上の成果です。プロダクトの成長が個人の成長につながり、チームの日々の成果が見えることで、ポジティブな取り組みはさらに広がっていくはずです」
より少ない工数で最大の成果を生みだせるエンジニア組織へ
増井氏らの発案で2019年に始まったNew Relicの導入は、2022年には100名を超えるエンジニア全員にまで展開された。ディップでは、2025年に向けて「ガンガン作れる200人体制」を確立するために社内エンジニアの拡充を進めており、New Relicの導入規模はさらに拡大することになる。豊濱氏は次のように話す。
「エンジニアの生産性指標を明確にして、開発に携わったエンジニアとそのチームが、どれだけの工数でプロジェクトを完了させ、結果としてビジネスパフォーマンスがどれだけ上がったかを可視化できるようにしたいと思っています。重要なのは、たくさんの工数をかけたことではなく、各プロジェクトや案件が、どのようなプロセスを経てより大きなビジネスの成果が得られたかです。一人ひとりのエンジニアが主体的に動き、より少ない工数で最大の成果を生みだせるようなエンジニア組織を目指すべきです。人月に変わる指標を整備して、チームやプロジェクト単位での生産性を正しく評価し、エンジニアがさらに活躍できる環境を整えるために、New Relicを活用していく考えです」
工数を把握するだけでなく、成果とつなげて客観的に可視化し、それを社内外に共有していくことにこそ意義があるという考えだ。
人材サービス・DXサービスを支えるアプリケーションの最新化、Amazon ECSへの移行も急ピッチで進められている。コンテナ化/クラウド化により、ビジネス要求に応えるアジリティとスケーラビリティの更なる強化を狙う。豊濱氏は次のように結んだ。
「モダンなアプリケーションとインフラの能力を最大まで引き出すには、New Relicのような進化し続けるオブザーバビリティ(可観測性)ツールが不可欠です。エンジニアが自分の成長を客観的な指標で把握し、着実に自分のスキルを高めていくためのプラットフォームとしても、New Relicがエンジニア組織の変革を加速させてくれるものと期待しています。New Relic社には、これからも私たちのチャレンジを支える技術サポートをお願いします」