Australia Postは、関連会社とともに、オーストラリアで郵便会社として事業を行っています。同社は1809年に設立され、主に個人、企業、および政府機関にサービスを提供しています。2019年、Australia Postはオーストラリア全土および世界190カ国以上に設置された1190万個所の配送拠点に33億個の郵便物を配達しました。
Australia Post、パンデミックの課題に対応するためNew Relicのオブザーバビリティを活用
新型コロナウイルスに伴うロックダウン期間中に業務を拡大
オーストラリアでは2020年5月上旬、あたかも時間が超高速で早送りされてサンタクロースがやってきたかのように感じられる出来事がありました。
新型コロナウイルス対策であるロックダウン(都市封鎖)措置が定着し、オーストラリアの郵便サービスへの需要が急増する中、例年ならホリデーシーズンに合わせて起こる繁忙期がいち早く訪れたのです。5カ月前のクリスマス期間と比べ、小包の追跡件数は40%増加し、認証要求は70%増加しました。
Australia Postのプラットフォーム・エンジニアリング部門の責任者を務めるアンドリュー・ネッテ氏は、「新型コロナ下での忙しさに比べれば、通常のクリスマスの繁忙期は何でもありませんでした」と振り返ります。
チーム全員が初めて在宅で勤務し、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)の制約によってオンラインでショッピングする人が増える中、ネッテ氏とそのチームはオンラインによるコラボレーションの機会を増やし、働き方を新しい環境に適応させる必要に迫られていました。同時に、顧客行動の変化によって引き起こされるオンライントランザクションの大幅かつ急激な増加に備え、対応せざるを得なくなっていました。
膨大なトランザクション量の要因は、顧客行動の変化だけではありませんでした。毎年4月末に行われる、Australia Postのすべての私書箱の定期的な契約更新が迫っていました。Australia Postは他にも、新型コロナウイルス・パンデミックの局面で地域社会を支援する新しいイニシアチブを立ち上げていました。この取り組みは、薬局が感染リスクの高い顧客に郵便配達網を通じて処方薬を無料で送れるようにするものです。このイニシアチブにより、薬局によるアカウント登録が急増しました。
「この新しいサービスへの登録は1日当たり数万件に上り、当社のシステムへの需要が高まりました」とネッテ氏は述べています。
繁忙期への備え
ネッテ氏によると、トランザクションの大幅な増加への備えの一環として、Australia Postがこうした需要に合わせて配達能力を拡大する準備ができていることを確認しようと、チームは一連の徹底的なテストを実施しました。同様のプロセスは毎年、クリスマスの繁忙期が訪れる前に実施されます。
ネッテ氏のチームはNewRelic APMを使用してカナリア・ロールアウト(一部ユーザーのみが利用できるように立ち上げ、新機能に問題がないことを確認しながら段階的に展開すること)を遂行しました。こうした展開方法は、Australia Postのバックエンドにかかる負荷を特定するのに役立ちました。この負荷には、医薬品配送サービスに登録する薬局の急増に起因するスモールビジネス(中小企業)ポータルへの前例のない需要も含まれていました。
「スモールビジネスポータル上の新しい登録フローの中で、従来はサポートが必要なかった部分を洗い出しました」とネッテ氏は述べています。「NewRelicにより、システムをトランザクションレベルで観察し、どの要素に焦点を当てる必要があるのかを明確に理解できるようになりました。」
優れた顧客体験を維持するため、ネッテ氏と彼のチームは、発生したエラーに対処すると同時に、増加した負荷を軽減することに力を注ぎました。これは主に、システムを水平方向に拡大することによって実行されました。その一方で、ネッテ氏とそのチームはフロントエンド認証キャッシングシステムを導入する機会を活用しました。このシステムには、バックエンドへのトラフィックを80%削減する効果がありました。このキャッシュを導入したことで、認証スタックを構成するサーバーの数をバックエンドシステムとフロントエンドシステムの両方で減らすことができました。
医薬品配送スキームの展開が加わったこともあり、Australia Postの配送数は通常の2倍を記録していましたが、小包の追跡件数も大幅に増加しました。
4月のトランザクション件数は3億4,000万件に達し、同社の歴史上最も多い月となりました。このトランザクション件数は前年同月(1億4,000万)の2倍を超え、2019年12月のクリスマスの繁忙期(2億件)と比べて70%増加しています。
Australia Postの追跡システムの4月のユーザー登録数は2020年2月の2.5倍となり、2019年12月を30%上回りました。小包追跡件数も4月は2020年2月の3倍を記録し、2019年12月の繫忙期と比べて40%増加しました。
「NewRelicにより、システムをトランザクションレベルで観察し、どの要素が設計通りに対応していないのかを明確に理解できるようになりました。」
アンドリュー・ネッテ氏、Australia Postプラットフォーム・エンジニアリング部門責任者
未来への備え
ネッテ氏によると、これまでの数カ月はAustralia Postのプロダクト・エンジニアリング・チームにとって非常に忙しくて混乱した期間となりました。このことにより、チームがアプリケーションを迅速かつ効果的に展開して、顧客に影響を与える問題を大幅に減らすとともに顧客体験を向上させる必要があるという課題を浮き彫りにしました。
ネッテ氏は、今年のクリスマスシーズンにおけるAustralia Postのトランザクション件数は、急増した2020年4月の水準を上回ると予想しています。それでも、この新しい計画によって、オーストラリア・ポストが将来的に強固な地位を築くことができると確信しています。
「4月に経験したようなトランザクションの急増が今後2年は起こらないと予想していたため、当社は新しいロードマップを作成し、輸送能力計画の大部分を前倒しで進める必要に迫られました。この作業は当社が高水準の顧客サービスを維持するために必要なことであり、長期的にお客様の需要に応えるために有益です」とネッテ氏は述べています。
長期にわたるパートナーシップ
Australia PostにとってNew Relicは長期的な戦略的パートナーであり、同社が5年前にマイクロサービス・アーキテクチャーに「足を踏み入れる」ためにNew Relicとの協力関係が始まりました。現在、ネッテ氏と彼のチームは、New Relicと密接に連携し、チームの不可欠な一員となっています。
「New Relicの技術を活用することで、サイトリアイアビリティエンジニアリングチームの効率が向上しています。また、アプリケーションスタックのサイズをより詳細に監視することができ、適切なサイズに調整してコストを抑えることができます。」New Relicは5年以上にわたり、監視およびアラート・プラットフォームの中心的な部分となっています」とネッテ氏は説明します。
New Relicは、新型コロナウイルスに伴うロックダウンがピークを迎えた期間だけでなく、2018年12月のクリスマス期間中にも貴重な知見をもたらしました。
ネッテ氏は、「New Relicの技術は、特定のシナリオでの登録プロセスにおける新たな問題を浮き彫りにするデータをもたらしました」と振り返ります。