利用用途

「物流のラストワンマイル」における様々な課題を解決する「TODOCU」「TODOCUサポーター」「TODOCUクラウド」の開発生産性とサービス品質の向上にNew Relic Oneを活用

New Relicの選定理由と成果

  • ビジネスの急成長を支えるアプリケーション開発のスピード化と高品質化の両立
  • ユーザーの利用体験に影響するシステム不具合の検知から復旧までを大幅に迅速化
  • TODOCUシリーズと連携する多様な外部システムとのAPI監視を強化

いつでもどこでもモノがトドク世界、世界的な物流ネットワークを創る――207(ニーマルナナ)は「TODOCUシリーズ」の提供を通じて物流ネットワークの変革に挑むスタートアップである。同社は、起業家の登竜門である「IVS LAUNCHPAD 2021」「JOIF STARTUP PITCH 2021」「TechCrunch Startup Battle 2020」の3つのピッチコンテストで優勝を果たし、一躍その名を知られることとなった。CTOとして技術開発と事業開発の両面をリードする福富崇博氏は次のように話す。

「私たちが目の前のテーマとして注力しているのが、デジタル化の波から取り残された『物流のラストワンマイル』における様々な課題の解決です。独自に開発した『TODOCUシリーズ』は、受取人向けの『TODOCU』、配達員向けの『TODOCUサポーター』、配送事業者向けの『TODOCUクラウド』から構成されます。荷物の到着を待たなければならない不自由さ、再配達に象徴される配送業務の非効率、アナログな業務手順に依存する物流業界それぞれに変革をもたらします」

スマートフォンアプリ「TODOCUサポーター」は、配送ビジネスに携わる個人事業主・中小配送事業者を中心に支持を拡大し、2020年4月の正式リリースからわずか2年で30,000ユーザーを突破した。人気の理由は、TODOCUサポーターによる配送業務の効率化が収益に直結することにある。配送事業者と契約する個人事業主は、荷物配達完了あたりの単価で報酬が決まるからだ。

「ユーザーへの調査を行ったところ、1時間あたりの配送完了件数が188.9%にまで増加し、月あたりの収入は5~12万アップしたという結果が得られました。配達員の間で評判が広がり、アプリのダウンロード数が急伸したのは2021年半ばのことです。私たちは、配送の現場が直面するリアルな課題を紐解きながら、TODOCUサポーターの機能を拡充させ使い勝手を洗練させていきました」(福富氏)

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宅配便の「再配達」を解消する画期的なサービス

2020年1月にビジネスモデル特許を取得した「TODOCUサポーター」では、受取人は在宅中に確実に荷物を受け取ることができ、外出中ならば置き配や時間変更を配達員に直接依頼できる。「再配達の解消」は、配送業務の効率を高められるだけでなく、受取人にとっても「待たなくていい」というメリットをもたらす。

「配達員が配送伝票をスマホカメラで撮影すると、アプリが受取人の住所情報や電話番号などをデータ化します。この情報を使って、TODOCUサポーター専用のSMSメッセージで受取人に在宅確認を送信する仕組みです。受取人は、SMSメッセージからセキュアな専用ページにアクセスし、在宅・外出中の回答、置き配の依頼、帰宅時間の連絡などを行えます」と福富氏は説明する。

アプリは住所情報をもとに緯度経度を特定し、マップ上に配達先をピンで示す。受取人から「在宅」の回答を受け取るとピンが緑色に、「外出中」の場合は赤色に変わる。今すぐ届けられるか否かが一目瞭然となり、再配達のリスクが大幅に低減されるわけだ。TODOCUサポーターは配達員向けスマホアプリを介してAWS上に構築されたサービス基盤に接続し、この画期的なサービスを提供している。

バックエンドはGraphQL Rubyで開発

「TODOCUサポーターでは、バックエンドのWebアプリケーションを中心に、OCR、地図情報、住宅地図情報など様々な外部サービスとAPIで連携しサービスを提供しています。一連の処理をリアルタイムで実行するために、Amazon AuroraとGoogle Firebase Realtime Databaseを組み合わせるなど、様々な工夫を施しています」(福富氏)

サービス基盤はAWS Fargateによるサーバーレス環境に構築され、Terraformを利用してInfrastructure as Codeによる構築・運用自動化を実現している。TODOCU、TODOCUサポーター、TODOCUクラウドの各サービスを共通基盤として支えているのは、コンテナベースのWebアプリケーションである。

「バックエンドシステムはGraphQL Rubyで開発しています。GraphQLはクライアントがリクエストしたデータだけを提供するため、REST APIよりもトランザクションの負荷を軽減できるメリットに注目しました。アプリはReact NativeとTypeScriptで実装しています」と福富氏は言う。

207では、2020年8月にオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームNew Relic Oneを導入し、APM、Synthetics、Logsを中心に「TODOCUシリーズ」のモニタリングに活用している。

「機能開発のスピードを高めながら、同時にアプリケーションとサービスの品質を向上させていくためには、New Relic Oneのようなオブザーバビリティツールが不可欠と考えました。ユーザー体験に影響する問題をいち早くSyntheticsで検知し、パフォーマンスボトルネックの原因をAPMで可視化し、システム上の不具合をLogsで追跡するところからNew Relic Oneの活用を始めました」(福富氏)

コード上の改善点をAPMで速やかに特定

207では「スピードMAX、クオリティ7割」を開発チームの行動指針として掲げ、1週間単位でスプリントを回しながら高速に開発を進めている。2020年に福富氏がCTOとして参画して以降、「TODOCU」のシステムは急速な進化を遂げてきた。

「TODOCUシリーズが、数万ユーザーの使う商用サービスへとその役割を高めていく中で、サービス品質と信頼性をいかに向上させていくかが課題になっていました。機能を磨く、使いやすさを磨く、信頼性を磨く――その全てを同時に進めなければなりません。スピードMAXを維持しながら、クオリティをさらに高めていくチャレンジです」と福富氏は言う。

TODOCUシリーズの特徴のひとつに、様々な外部サービスとのリアルタイム連携によって利便性の高いサービスを実現していることがある。従来はAWSの標準ツールなどを使用してインフラを中心にモニタリングしてきたというが、New Relic Oneの導入によってどのような効果が生まれたのか。

「同時接続ユーザー数が増えるほどAPI呼び出しのパフォーマンスが悪化することが分かっていたのですが、なかなか原因を究明できない状況が続いていました。ここにNew Relic OneのAPMを適用すると、即座にボトルネックが可視化され、アプリケーションプロセスとコード上の改善点を特定することができました。オブザーバビリティツールの威力を最初に実感できた事象です」(福富氏)

エラーログの解明にはNew Relic OneのLogsが活躍する。フロントエンドのエラーは、端末の種類やブラウザーのバージョンなど問題点の特定を困難にする要素が多い。

「たとえば、特定の配達員でエラーが繰り返されるような事象に対しても、問題解決の工数と時間が大幅に短縮されました。Logsで膨大なエラーログの中から配達員IDに紐づくログを検索し、エラーが発生した時間を追いながら、APMから収集されたデータと関連付けて問題点を探ることができます」(福富氏)

さらに207では、インフラ監視ツールもNew Relic OneのInfrastructureに置き換え、モバイルアプリへの適用も視野に入れてオブザーバビリティ(可観測性)の強化を進めている。福富氏は、「ユーザー体験に影響する問題が顕在化する前に、事前に手を打てるような活用を進めていく」と力を込める。

同社では、アプリケーションからインフラまで精通したフルスタックエンジニアが活躍しているが、TODOCUシリーズのビジネスが拡大し続ける中、特定分野のスペシャリストによる分業体制に移行する時期もいずれやって来るはずだ。

「New Relic Oneによるオブザーバビリティを使えば、自分が直接携わっていない領域でも探索的に問題箇所や原因を特定することができます。インフラエンジニアがコード上の不具合を発見し、アプリの開発者がスロークエリを指摘するようなことも難しくありません。New Relic Oneのダッシュボードからメトリクスを共有し、これを共通言語としてチーム全体で効果的にコミュニケーションできるようになることが理想ですね」(福富氏)

物流業界に変革をもたらすサービスを創造

2021年10月、207は第三者割当増資により総額およそ5億円の資金調達を実施した。物流Tech事業の急拡大を目指し、エンジニアの拡充にも力を注いでいる。

「207のミッションの全文は、『いつでもどこでもモノがトドク、世界的な物流ネットワークを創る』です。物流のラストワンマイルへの取り組みはその第一歩であり、AIによる最適ルート提案機能やオンデマンドで近くの配達員とマッチングするシステムの開発も進んでいます。そして、その先には『世界中どんな場所でもどんな時間でもスムーズにものがトドク、次世代の世界的物流ネットワークを創造する』というビジョンを描いています」(福富氏)

物流・配送事業者向けの配送管理システム「TODOCUクラウド」は、「TODOCUシリーズ」の支持層を企業レベルに拡大させている。福富氏は、「物流業界の変革にこそテクノロジーを活用すべき」と話しつつ次のように結んだ。

「デジタル化の遅れている物流業界は、いま最も大きな変革のダイナミズムを実感できる領域です。バックエンドのRubyとGraphQL、フロントエンドのReact NativeとTypeScriptのエンジニアの増員を急がなければなりません。私たちの仕事が、新しいサービスと利便性を創造し、新しい働き方やライフスタイルを生み出していく過程を一緒に楽しんでもらえる方を心より歓迎します」